乳児の消化管アレルギー
乳児の消化管アレルギー
お子さんがミルクや離乳食を食べたあとに、急に繰り返し嘔吐したり、顔色が悪くなってしまうと、とても心配になりますね。そのような症状の背景に「乳児の消化管アレルギー」が隠れていることがあります。医学的には食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES:Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome)と呼ばれます。ここでは、乳児の消化管アレルギーについて、保護者の皆さんに知っていただきたいポイントをわかりやすくご紹介します。
FPIESは、原因となる食べ物を摂取した1〜4時間後に繰り返し嘔吐が起こる病気です。多くの場合、ぐったりしたり顔色が悪くなったりするため、体調の急変に気づいて慌ててしまう保護者の方も少なくありません。下痢や血便、発熱を伴うこともあります。
特徴的なのは、一般的な食物アレルギーのようにじんましんや皮膚のかゆみなどの症状が出ない点です。そのため、初めて経験する際には「ウイルス性胃腸炎かな?」と見分けが難しい場合もあります。
ただし、原因となる食物を避けると、症状はおおむね24時間以内に改善します。
新生児期や乳児期早期では、ほとんどがミルク(普通ミルク)によって発症します。母乳栄養のお子さんでは少ないですが、混合栄養や人工栄養の場合に見られることがあります。
また、離乳食が始まると、卵黄・小麦・大豆などが原因になるケースが出てきます。特に最近の日本では、卵黄が原因となるケースが増えていると報告されています。
多くの場合、幼児期までに自然と治っていくことが多いとされているため、成長とともに改善が期待できます。
FPIESの診断は、特定の食べ物を除去して症状がなくなるかどうか(食物除去試験)を確認し、経過を見ながら行われます。
必要に応じて、食物経口負荷試験(医師の管理下で少量の食べ物を食べて症状の有無を確認する検査)が行われることもあります。
一方で、一般的に「アレルギー検査」として知られる血液検査(特異的IgE抗体検査)では診断できません。皮膚症状が出ないため、血液検査では異常が見られないケースが多いのです。
原因となる食物を食べて1〜4時間後に嘔吐が始まった場合、対応の仕方によって安心できる場面と、受診が必要な場面があります。
FPIESと診断された場合は、原因食物を除去することが基本となります。ミルクが原因であれば、医師の指導のもとアレルギー用ミルク(例:ニューMA-1など)を使用することが推奨されます。
また、乳児期〜幼児期にかけて自然に改善することが多いため、定期的に食物経口負荷試験を行い、治っているかを確認していきます。保護者が独自に判断せず、必ず医師と相談しながら進めることが大切です。
突然の嘔吐や顔色の変化は、誰でも驚いてしまいます。ですが、FPIESは正しく診断され、原因となる食物を避けながら成長を見守っていくことで、多くのお子さんが幼児期までに改善していきます。
「離乳食を始めたら吐いてしまった」「いつもと違うぐったり感がある」など、不安に思ったときには、無理に原因を探ろうとせず、まずは小児科やアレルギー専門医に相談してください。
乳児の消化管アレルギー(FPIES)は、ミルクや卵黄などの食べ物が原因で数時間後に嘔吐やぐったりとした症状を引き起こす病気です。皮膚症状が出ないため気づきにくいのが特徴ですが、正しく診断し、原因食物を除去することでコントロールが可能です。多くの場合は幼児期までに自然に治るため、焦らず、医師と連携してお子さんの成長を見守っていくことが大切です。