子どもの水分補給ガイド|1日に必要な水分量・脱水のサイン・受診の目安
- 2024年8月7日
- 星空栄養だより

お子さまの体は大人よりも水分の割合が多く、そのぶん脱水にもなりやすいことをご存じでしょうか。1日に必要な水分量は年齢(体重)によって目安があり、「こまめに・少しずつ」補給することが基本です。この記事では、年齢別の必要水分量の目安、上手な水分補給のコツ、脱水のサインと受診の目安まで、保護者の方が知っておきたいポイントをまとめて解説します。
なぜ子どもは水分補給が特に大切なのか
私たちの体の中では、栄養を運ぶ・体温を調節する・老廃物を排出するといった働きのすべてに水が関わっています。細胞の中で起こるさまざまな化学反応にも水が必要で、水分が不足するとこれらの働きがスムーズにいかなくなります。
特にお子さまの場合、大人と比べて注意したい理由が3つあります。
・体の水分の割合が高い:
大人の体は約60%が水分ですが、乳幼児では約70〜80%と、体に占める水分の割合が高くなっています。体が小さいぶん、失われる水分の影響も大きく出やすいのです
・「喉が渇いた」と感じにくい:
喉の渇きを感じる脳の働き(口渇中枢)が未熟なため、体は水分を欲しがっていても、お子さま自身が「喉が渇いた」と気づかないことが少なくありません
・腎臓の機能が発達の途中:
尿を濃縮して水分を節約する腎臓の働きがまだ十分でないため、体の水分を保つ力が大人より弱い傾向があります
また、子どもは体重あたりの体表面積が大きく、汗や皮膚・呼吸から知らないうちに失われる水分(不感蒸泄)も多めです。遊びに夢中になると飲むのを忘れてしまうことも多いので、周りの大人が意識して水分補給の機会をつくってあげることが大切です。
1日に必要な水分量の目安(年齢別)
1日に必要な水分量は、体重1kgあたりで考えるとわかりやすくなります。年齢別の目安は次のとおりです。

| 年利の区分 | 体重1kgあたりに必要な水分量(1日) |
| 新生児 | 約50〜120ml |
| 乳児 | 約120〜150ml |
| 幼児 | 約90〜100ml |
| 学童 | 約60〜80ml |
たとえば体重15kgの幼児なら「15kg × 90〜100ml = 約1.35〜1.5L」、体重38kg前後の10歳のお子さまなら、日常生活でおよそ1日1.5L程度が目安になります。
ここで大切なのは、この量は「飲み物だけ」で摂る量ではないということです。ごはんやおかず、汁物、果物など、食事にも多くの水分が含まれています。3食をしっかり食べられていれば、必要量のうちかなりの部分は食事からまかなえます。逆に、食欲が落ちているときは食事からの水分も減るため、飲み物での補給をいつもより意識してあげてください。なお、この目安はあくまで平常時のものです。汗をたくさんかく季節や運動時、発熱・嘔吐・下痢などで水分が多く失われるときは、必要量が増えます。体調や環境に合わせて調整することが大切です。(個人差があります。)
体重から計算する方法(1kgあたりの目安)
1日に必要な水分量(食事に含まれる水分も含みます)は、体重1kgあたりの目安でも考えることができます。いずれも目安で、気温・活動量・体調によって変わります。
新生児:約80〜100ml/kg
乳児(〜1歳頃):約120〜150ml/kg
幼児(1〜5歳頃):約90〜100ml/kg
学童(6歳〜):約60〜80ml/kg
たとえば体重12kgの2歳のお子さまなら、1日およそ1,100〜1,200mlが目安です(食事の水分を含む)。飲み物だけでこの全量をとる必要はありません。
医療の現場では、体重から計算する「ホリデー・シガー法」もよく用いられます。体重10kgまでは100ml/kg、10〜20kgは1,000ml+(10kgを超えた体重×50ml)、20kg以上は1,500ml+(20kgを超えた体重×20ml)が1日の維持水分量の目安です。
上手な水分補給のコツ
「ちょこちょこ飲み」が基本
一度にたくさん飲んでも、体が吸収しきれない分は尿として出ていってしまいます。おすすめは、20〜30分おきくらいに、2〜3口ずつ「ちょこちょこ」飲む方法です。喉が渇いたと感じてから慌てて一気に飲むのではなく、渇きを感じる前にこまめに補給するのが理想的です。
水分補給のタイミング
次のようなタイミングで飲む習慣をつけると、無理なく続けられます。
・起床時(寝ている間に汗などで水分が失われています)
・外出やお出かけからの帰宅時
・運動の前・最中・後
・入浴の前後
・就寝前
飲み物は水やお茶(麦茶など)を基本に
日常の水分補給は、水や麦茶などのカフェインを含まないお茶が基本です。ジュースやスポーツドリンクなどの甘い飲み物は糖分が多く、日常的に飲むと虫歯や肥満、食欲低下の原因になることがあります。また、緑茶・紅茶・コーヒーなどに含まれるカフェインには利尿作用があり、お子さまの日常の水分補給には向きません。甘い飲み物は「特別なときのお楽しみ」程度にしておくと安心です。
乳児期(赤ちゃん)の水分補給のポイント
・離乳食の初期〜中期のあいだは、母乳やミルクが水分補給の主体です。基本的にはそれで足りることがほとんどです
・離乳食が進んで1日3回の食事に移行してきたら、食事や遊びの合間に白湯や麦茶で水分を補給していきましょう
・スプーン、コップ、ストローなど、いろいろな飲み方を少しずつ試すと、飲むことに慣れていきます
・一度にたくさんは飲めないので、少量ずつこまめに、が基本です
脱水のサインの見分け方
お子さまは自分から「脱水かも」とは言えません。周りの大人が次のようなサインに気づいてあげることが大切です。

早めに気づきたいサイン
・尿の回数がいつもより少ない、色が濃い
・唇や口の中が乾いている
・汗をかいていない(暑いのに)
・何となく元気がない、機嫌が悪い
注意が必要なサイン
・泣いても涙が出ない、または少ない
・目が落ちくぼんで見える
・皮膚の張りがなく、カサカサしている
・赤ちゃんの場合、頭のやわらかい部分(大泉門)がへこんでいる
・うとうとして反応が鈍い、ぐったりしている
「注意が必要なサイン」が見られる場合は、脱水が進んでいる可能性があります。ためらわずに医療機関を受診してください。
病気のとき・暑い季節の水分補給
発熱・嘔吐・下痢のとき
発熱時は汗や呼吸から失われる水分が増え、感染性胃腸炎などで嘔吐や下痢があるときは、水分と一緒に塩分(電解質)も失われます。このようなときは、水やお茶だけでなく、水分と電解質を効率よく補える経口補水液の活用が役立ちます。嘔吐があるときに一度にたくさん飲ませると、かえって吐き戻してしまうことがあります。スプーン1杯程度のごく少量から、5〜10分おきに少しずつ与え、様子を見ながら量を増やしていくのがコツです。経口補水液の考え方や作り方は、手作り経口補水液の作り方の記事でも詳しくご紹介しています。
暑い季節・運動時
気温や湿度が高い日は、熱中症の予防としても水分補給がいっそう重要です。子どもは大人より地面からの照り返しの影響を受けやすく、体温調節機能も未熟なため、熱中症になりやすいとされています。外遊びやスポーツの前には必ず水分を摂り、活動中も時間を決めてこまめに補給しましょう。たくさん汗をかいたときは、塩分も一緒に補える飲み物を上手に取り入れてください。
受診の目安|こんなときは医療機関へ
次のような場合は、自宅での水分補給だけで様子を見ず、医療機関の受診をご検討ください。
・水分を飲ませても繰り返し吐いてしまい、ほとんど摂れない
・半日以上(乳児では6時間以上が目安)おしっこが出ていない
・ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍い、うとうとしてばかりいる
・下痢や嘔吐が続き、みるみる元気がなくなっていく
・唇や口の中の乾き、涙が出ないなどの脱水サインが複数あてはまる
とくに乳児は体が小さく、脱水が短時間で進みやすいため、早めの受診が安心です。夜間や休日に迷ったときは、こどもの救急(日本小児科学会監修のオンライン情報)や小児救急電話相談(#8000)も参考になります。判断に迷う場合は、かかりつけ医にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもが水やお茶を飲みたがりません。どうすればいいですか?
まずは、起床時・帰宅時・入浴後など「飲むタイミング」を生活の中に決めてしまうのがおすすめです。お気に入りのコップや水筒を用意する、大人が一緒に飲む、食事に汁物や水分の多い果物を取り入れる、といった工夫も効果的です。無理強いすると飲むこと自体を嫌がることがあるので、少量ずつ気長に習慣づけていきましょう。
Q2. スポーツドリンクを毎日の水分補給にしてもいいですか?
日常の水分補給としてはおすすめしません。スポーツドリンクは糖分が多く、毎日飲むと虫歯や肥満、食欲低下につながることがあります。日常は水や麦茶を基本にし、スポーツドリンクは長時間の運動や大量に汗をかいたときなど、場面を限って活用するとよいでしょう。
Q3. 経口補水液は元気なときに飲ませてもいいですか?
経口補水液は、嘔吐・下痢・発熱・大量発汗などで水分と塩分が失われたときのための飲み物で、塩分が比較的多く含まれています。元気で普通に食事が摂れているときの日常的な飲用は基本的に不要です。使いどきや与え方に迷ったら、受診の際にお気軽にご相談ください。
Q4. 夜中のおねしょが心配で、寝る前の水分を控えたほうがいいですか?
寝ている間にも汗などで水分は失われるため、就寝前の水分を極端に控えるのはおすすめしません。コップ半分〜1杯程度の水分は摂ってかまいません。おねしょ(夜尿)が続いてご心配な場合は、水分制限で解決しようとせず、一度小児科にご相談ください。
Q5. 赤ちゃんにお風呂上がりの白湯は必要ですか?
離乳食が始まる前の赤ちゃんは、母乳やミルクで水分と栄養を摂るのが基本で、必ずしも白湯を足す必要はありません。お風呂上がりに欲しがるようなら、母乳やミルクをあげれば十分なことがほとんどです。離乳食が3回食に進んだ頃からは、白湯や麦茶を少しずつ取り入れていきましょう。
まとめ
・子どもは体の水分割合が高く、喉の渇きにも気づきにくいため、大人が意識して水分補給の機会をつくることが大切です
・1日に必要な水分量の目安は体重1kgあたりで、乳児120〜150ml・幼児90〜100ml・学童60〜80ml(食事からの水分も含む)です
・「20〜30分おきに2〜3口ずつ」のちょこちょこ飲みが基本。飲み物は水や麦茶を中心に
・尿の減少・唇の乾き・涙が出ない・ぐったりなどは脱水のサイン。水分が摂れない、半日以上尿が出ないなどの場合は医療機関を受診してください
体格や体調によって必要な水分量には個人差があります。症状が続く場合や判断に迷う場合は、医療機関にご相談ください。
受診のご案内
当院では、小児科の診療のなかで、お子さまの水分補給や脱水についてのご相談をお受けしています。また、管理栄養士による栄養相談を毎週水曜14:30〜16:00に行っており(予約優先・空きがあれば当日も可)、日々の飲み物の選び方や食事からの水分の摂り方など、ご家庭に合わせて具体的にアドバイスしています。離乳食の進め方や食材の開始時期についてはこの食べ物いつからOK?の記事もご参考ください。
監修・医師紹介
星空こども・アレルギークリニック 院長 塚本 容子(つかもと ようこ)
日本小児科学会認定 小児科専門医/日本アレルギー学会専門医/エピペン処方登録医/免疫療法薬登録医(舌下免疫療法)/コンサータ・ビバンセ処方登録医(ADHD治療薬)/大阪府発達障がい精神科医師養成研修修了認定。
1999年兵庫医科大学卒。神戸大学医学部附属病院小児科、兵庫県立こども病院、神奈川県立こども医療センター、国立成育医療研究センターアレルギー科など、小児医療の中核施設で研鑽を積む。専門は小児アレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・気管支喘息)。大阪精神医療センター児童思春期精神科で発達外来を担当(現任・木曜午前)。所属学会は日本小児科学会・日本アレルギー学会・日本小児精神神経学会・日本小児心身医学会。
詳しいプロフィールは院長紹介ページをご覧ください。気になる症状は自己判断せず、お気軽にご相談ください。
参考文献
・環境省「健康のため水を飲もう」推進運動:
https://www.env.go.jp/water/water_supply/nomou/index.html
・環境省 熱中症予防情報サイト:
https://www.wbgt.env.go.jp/
・こどもの救急(厚生労働省研究班/公益社団法人日本小児科学会監修):
https://kodomo-qq.jp/
