食物アレルギー「くるみ」が第2位に|症状・検査・表示義務化を解説
- 2025年2月19日
- 星空栄養だより
消費者庁の最新の全国調査で、くるみアレルギーは食物アレルギーの原因食物として鶏卵に次ぐ第2位となりました。2023年の法改正でくるみは表示が義務づけられる「特定原材料」に追加され、経過措置も2025年3月末で終了し、現在は加工食品への表示が完全に義務化されています。この記事では、くるみアレルギーの症状・検査・治療、増加の背景、そしてご家庭で誤食を防ぐポイントを、小児アレルギーを専門とする当院がわかりやすく解説します。

くるみアレルギーが原因食物の第2位に|最新の全国調査
食物アレルギーの原因といえば、長らく「鶏卵・牛乳・小麦」が3大原因食物とされてきました。ところが近年、この順位が大きく変わっています。
消費者庁「令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」(即時型食物アレルギー全国モニタリング調査)によると、食べてすぐに症状が出る「即時型」の食物アレルギーの原因食物は、多い順に次のとおりでした。
・第1位:鶏卵(26.7%)
・第2位:くるみ(15.2%)
・第3位:牛乳(13.4%)
・第4位:小麦(8.1%)
・第5位:落花生(ピーナッツ)(7.0%)
くるみは牛乳・小麦を抜いて、単独で第2位です。さらに、くるみ・カシューナッツ・マカダミアナッツなどを合わせた「木の実類(ナッツ類)」全体では24.6%にのぼり、第1位の鶏卵(26.7%)に迫る割合となっています。木の実類による食物アレルギーが、この10年ほどで急速に増えていることがわかります。なお、鶏卵や牛乳のアレルギーは乳児期に発症して成長とともに食べられるようになるお子さまが多いのに対し、くるみをはじめとする木の実類のアレルギーは幼児期以降に初めて症状が出るケースが目立つのが特徴です。「離乳食の時期は何ともなかったから大丈夫」と思い込まず、幼児期・学童期の新たな発症にも注意が必要です。
なぜ増えている?くるみアレルギー増加の背景
くるみアレルギーが増えた背景には、くるみを食べる機会そのものが増えたことがあると考えられています。健康志向の高まりからナッツ類が「体によい食品」として注目され、くるみ入りのパン・グラノーラ・お菓子・サラダなどが身近になりました。国内のくるみ消費量(輸入量)はこの数十年で大きく増加しており、口にする機会が増えたぶん、アレルギーを発症するお子さまも増えたと推測されています。
食物アレルギーは「食べる機会が増えた食品で増える」傾向があり、くるみはまさにその代表例といえます。今後もナッツ類の消費拡大にともない、注意が必要な状態が続くと考えられます。
くるみアレルギーの症状|こんなサインに注意
くるみアレルギーの症状は、食べてから多くは2時間以内(早ければ数分以内)にあらわれる「即時型」が中心です。代表的な症状には次のようなものがあります。
・皮膚の症状:じんましん、赤み、かゆみ、まぶたや唇の腫れ
・口・のどの症状:口の中のイガイガ感・違和感、のどのかゆみ
・消化器の症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
・呼吸器の症状:咳き込み、ゼーゼーする(喘鳴)、声がれ、息苦しさ
・全身の症状:ぐったりする、顔色が悪くなる、意識がもうろうとする
症状の出方や強さには個人差があり、ごく少量で強い症状が出るお子さまもいれば、皮膚症状だけで済む場合もあります。
特に注意したい「アナフィラキシー」
皮膚・呼吸器・消化器など複数の臓器に症状が同時にあらわれる強いアレルギー反応を「アナフィラキシー」と呼びます。さらに血圧が下がり、ぐったりする・意識がもうろうとするなどの状態は「アナフィラキシーショック」といい、命に関わることがあります。くるみを含む木の実類は、アナフィラキシーなどの重い症状の原因となる報告が少なくない食品です。食後に咳き込みが止まらない、声がかすれる、ゼーゼーして苦しそう、ぐったりしている——このような症状が見られたら、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。エピペン(アドレナリン自己注射薬)を処方されているお子さまは、迷ったら使用することが原則とされています。

くるみアレルギーの検査と診断
「くるみを食べたあとに症状が出た気がする」「木の実類をまだ食べさせたことがなく不安」という場合は、自己判断で除去を続けたり、逆に試したりする前に、アレルギー専門の医療機関へご相談ください。
血液検査(特異的IgE抗体・Jug r 1)
まず行われるのが、くるみに対する特異的IgE抗体を調べる血液検査です。さらに近年は、くるみアレルギーの主要なアレルゲン成分である「Jug r 1(ジャグ アール ワン)」に対する特異的IgE検査が保険診療で測定できるようになり、従来のくるみ特異的IgE検査よりも診断の精度を高める手がかりになります。数値が高いほど症状が出る可能性は高くなりますが、数値だけでアレルギーの有無が確定するわけではなく、実際に食べたときの症状とあわせて総合的に判断します。
食物経口負荷試験
診断を確定したり、「どのくらいの量までなら食べられるか」を確認したりするために最も確実なのが、医師の管理のもとで実際に食品を少量ずつ食べて症状を観察する食物経口負荷試験です。当院でも食物経口負荷試験を行っており、血液検査の結果とあわせて「不必要な除去をしない・危険な誤食をさせない」ための計画を一人ひとり立てています。
ほかの木の実(ナッツ)もすべて除去が必要?
くるみアレルギーがあると「ナッツ類は全部ダメ」と思われがちですが、木の実類はそれぞれ別の食品であり、一律にすべて除去する必要はありません。一方で、くるみとペカン、カシューナッツとピスタチオのように、たんぱく質の構造が似ているため一緒に症状が出やすい(交差反応が起きやすい)組み合わせが知られています。どの木の実を避け、どれは食べてよいかは検査と負荷試験で個別に確認できますので、自己判断で除去範囲を広げず、専門の医療機関でご相談ください。
くるみの表示義務化|2023年の法改正と経過措置の終了
くるみアレルギーの急増を受けて、2023年(令和5年)3月に食品表示基準が改正され、くるみは容器包装された加工食品への表示が義務づけられる「特定原材料」に追加されました。これにより特定原材料は、えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)の8品目になりました。
改正には経過措置期間が設けられていましたが、2025年3月31日で終了し、現在はくるみを含む加工食品にはアレルギー表示が完全に義務化されています。パッケージの原材料表示を確認すれば、くるみが入っているかどうかを確かめられるようになったことは、アレルギーのあるご家庭にとって大きな前進です。
それでも注意したい「表示ではわからない」場面
ただし、次のような場面では表示義務の対象外となるため、引き続き注意が必要です。
▼外食・お惣菜・店頭のばら売り:
レストランのメニューやパン屋・ケーキ屋の対面販売品には表示義務がありません。注文時に「くるみは入っていますか」と必ず確認しましょう
▼意外な食品への使用:
くるみは、パンやお菓子だけでなく、和菓子(ゆべし等)、五平餅のたれ、みそだれ、ドレッシング、ペースト状のソースなど、見た目ではわからない形で使われていることがあります
▼アーモンドなどその他の木の実:
アーモンド・カシューナッツ・マカダミアナッツなどは表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」にとどまり、表示義務はありません

受診の目安|宝塚・西宮でくるみアレルギーを相談するには
次のような場合は、一度アレルギー専門の医療機関の受診をおすすめします。
・くるみやナッツ入りの食品を食べたあとに、じんましん・咳き込み・嘔吐などの症状が出たことがある
・木の実類をまだ食べさせたことがなく、初めて与えるのが不安
・血液検査で「くるみ陽性」と言われたが、実際に食べられるかわからないまま除去を続けている
・園や学校に提出する生活管理指導表の記載が必要
当院は宝塚市の小児科・アレルギー科クリニックとして、宝塚市内はもちろん西宮市など近隣地域のお子さまの食物アレルギー診療を行っています。院長は日本アレルギー学会専門医・小児科専門医であり、エピペン及びネフィーの処方(処方登録医)や食物アレルギーの検査、食物経口負荷試験に対応しています。症状が続く場合や判断に迷う場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. くるみアレルギーは何歳ごろに多いですか?
木の実類のアレルギーは、鶏卵や牛乳と比べて幼児期以降に初めて症状が出るケースが目立ちます。くるみ入りのパンやお菓子を食べ始める1〜6歳ごろの発症報告が多い傾向がありますが、学童期や大人になってから発症することもあります。
Q2. くるみアレルギーは治りますか?
鶏卵・牛乳・小麦のアレルギーは成長とともに食べられるようになるお子さまが多い一方、くるみを含む木の実類やピーナッツのアレルギーは自然に治りにくいとされています。ただし経過には個人差がありますので、定期的に検査や負荷試験で見直していくことが大切です。
Q3. くるみがダメならアーモンドやカシューナッツも避けるべきですか?
一律にすべて避ける必要はありません。木の実類はそれぞれ別の食品で、くるみとペカンのように交差反応が起きやすい組み合わせはあるものの、検査と食物経口負荷試験で「食べられる木の実」を個別に確認できます。自己判断で除去を広げると栄養や食生活の幅を狭めてしまうため、専門の医療機関でご相談ください。
Q4. 誤ってくるみを食べてしまったときはどうすればよいですか?
まず口の中に残っているものを出させ、症状を観察してください。じんましんなど皮膚症状のみであれば、処方されている抗アレルギー薬を使用し医療機関に相談を。咳き込みが続く、ゼーゼーする、嘔吐を繰り返す、ぐったりするなど複数の症状が出た場合はアナフィラキシーの可能性があり、エピペンがあればすぐに使用し、救急車を呼んでください。
Q5. 初めて子どもにくるみを与えるとき、気をつけることはありますか?
体調のよい日の日中(平日の午前中など、すぐ受診できる時間帯)に、少量から試すのが基本です。なお、粒のままのナッツ類は気管に入りやすく窒息の危険があるため、5歳以下のお子さまには形状にも注意が必要です。湿疹が続いているお子さまやご家族にアレルギーがある場合など、不安があれば与える前にご相談ください。
まとめ
消費者庁の最新の全国調査で、くるみは食物アレルギーの原因食物の第2位となり、木の実類全体では鶏卵に迫る割合となっています。2023年の法改正でくるみは特定原材料に追加され、現在は加工食品へのアレルギー表示が完全義務化されましたが、外食やばら売りの食品には表示義務がなく、引き続き注意が必要です。くるみアレルギーは血液検査(Jug r 1を含む)と食物経口負荷試験によって「避けるべきもの」と「食べられるもの」を個別に見極めることができます。症状に心当たりがある場合は、自己判断で除去したり試したりせず、医療機関にご相談ください。
受診のご案内
星空こども・アレルギークリニックでは、小児のアレルギー診療を専門とする院長が、くるみをはじめとする食物アレルギーの検査・食物経口負荷試験・エピペンの処方・生活管理指導表の記載に対応しています。宝塚市・西宮市など近隣にお住まいで、お子さまの食物アレルギーにお悩みの保護者の方は、お気軽にご相談ください。離乳食の進め方に不安がある方は、関連記事「この食べ物いつからOK?」もあわせてご覧ください。当院の食物アレルギー診療について詳しくは、食物アレルギー専門ページもあわせてご覧ください。
監修・医師紹介
星空こども・アレルギークリニック 院長 塚本 容子(つかもと ようこ)
日本小児科学会認定 小児科専門医/日本アレルギー学会専門医/エピペン処方登録医/免疫療法薬登録医(舌下免疫療法)/コンサータ・ビバンセ処方登録医(ADHD治療薬)/大阪府発達障がい精神科医師養成研修修了認定
1999年兵庫医科大学卒。神戸大学医学部附属病院小児科・兵庫県立こども病院・神奈川県立こども医療センター・国立成育医療研究センターアレルギー科など、小児医療の中核施設で研鑽を積む。専門は小児アレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・気管支喘息)。大阪精神医療センター児童思春期精神科で発達外来を担当(現任・木曜午前)。所属学会:日本小児科学会・日本アレルギー学会・日本小児精神神経学会・日本小児心身医学会。
気になる症状は自己判断せず、お気軽にご相談ください。
参考文献
・消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
・消費者庁「令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書」
・食物アレルギー研究会「食物アレルギーの診療の手引き」